螺鈿の時間
- 11月6日
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先日、ドライブがてら入った食堂でのことです。
向かいのテーブルに、とある母娘がやってきました。
それを見たときに、私は思わず落涙しそうになりました。
グレーのニット帽に、くすんだピンクのカーディガンを羽織ったお母さんは、
ご高齢で、だいぶ耳も遠く、
車椅子に乗っていて、たぶん、歩くことも自由ではないようでした。
けれど、とても、とても、とても、幸せそうでした。
そして、娘さんの、車椅子を押す力の込め方や、
マスクをかけてあげる手つきが、
とても、とても、とても、優しいものでした。
日常によくある風景の一つではあるけれど、
私は、もの凄い絵画でも見たかのような気持ちになりました。
お二人の事を何も存じ上げません。
けれど、きちんと時間を味わい消化した人にしか
出せないような彩がありました。
時間をかけることでしか出せない色。
自然の中に
人の中に
伝統と文化の中に。
これ見よがしに見せようとはしない磨かれた色を見たとき、
時間を重ねることでしか産まれない色を見たとき、
やはり、敵わないと感じずにはいられません。



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