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名もなき王女の見えない王国

  • 8月9日
  • 読了時間: 2分

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風が 何かを知らせに来た朝

まだ名も知らぬ わたしが

この世界に ひとしずく落ちた

光は覚えていたけど

言葉が ついてこなかった

 



「やさしい子ね」

「えらいね」

「わかってるね」

誰かの期待のなかで

わたしは 誰かを演じていた


笑えば褒められ

沈めば心配される

本当の声をどこかに

しまったまま

 



湖を歩く夢をみた 

深く透明で 音がない場所

底には 金色の種がひとつ

「それは あなたです」と 

声が聞こえた





 

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地図のない旅を はじめた

探すのは なくしたものではなく

忘れていたもの


過去でも 未来でもなく

今ここに あるもの

答えは 外にはないと心底気づいた

 



歩くたびに 現れる影

見ないふりをしていた日々が

形になって やってくる


怒りも 怖さも 寂しさも

ひとつずつ 見つめて名を呼んだ


すると影たちは 言った

「ありがとう。やっと見てくれたね」

 




真夜中、わたしのなかに 灯りが灯った

誰にも見せなくていい

誰かの承認もいらない

ただ、わたしがわたしの光を見つけたことが

ほんとうに うれしかった


 

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あると思っていた王国は

どこにもなかった

王冠も 玉座も

誰かがくれるものじゃなかった

わたしがわたしを迎えに来たこの場所が

王国の入口だった

 




決めた瞬間

風景が変わった

誰のためでもなくわたしが 

わたしの人生にYesといったその時に

わたしはわたしの主権を取り戻した

 




これは終わりではなく

静かなはじまり


光を生きるとは

すべてがうまくいくことじゃなく

何があってもわたしの光を

消さないと決めることだった


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