いのうえ君。
- shizenbiyori

- 6月1日
- 読了時間: 2分
全くよくわからない脈絡で、突然、過去の事を思い出すことがある。
昨日は、重曹を切らして放置していたワラビのあく抜きを、ようやく済ませたタイミングだった。
いのうえ君は、中学生の同級生である。
テンションの上がりきらないところなのか、なんとなく空気感が近かった。
修学旅行や体育祭などの、熱量を要するイベントには、もちろん付いていけなくて、後からついていくと、そこには、いのうえ君もいる。
そして、何気ない会話を、ぽつぽつ交わす。そんな関係だった。
中学を卒業してからも、学校は違えど、高校・大学と、ときどき会って話をすることがあった。
今、あの頃の心の中を探っても、それは「恋」ではなく、「兄弟感覚」というのが一番近いように思う。
人柄が優しく、仲間想いで、割とみんなから人気があるにも関わらず、
人目の集まる場からは、自ら頑なに一線を引いているような印象がある人だった。
学業でもスポーツでも、どこか”負けてあげている”感じのする人だった。
不思議に思って、「なんで?」と聞いたこともあった。
「あぁいうの、駄目なんだよね」と、ぼんやりとした返答しか返ってこなかったけれど、
おそらく、競争とか戦いとかが根っから好きではなかったんだろうなと思う。
最後に会ったのは、地元のスーパーマーケットだった。
就職して、3年くらい経った頃だったと思う。
偶然、ばったりと遭遇した。
互いに待たせている家族がいたこともあり、少しだけ言葉を交わした。
「今、どこにいるの?」と、いのうえ君。
「埼玉。東京で働いているよ。」と、私。
「俺も、埼玉いたんだ。合わなくて、仕事すぐ辞めっちゃったけど・・・。
今は、こっちで働いている。」そういって、穏やかな笑みを浮かべると、
「あなた、すごいね!」と言い、去っていった。
凄くない。全然、凄くない。
仕事は合わないし辛いし、付き合っていた彼とは別れそうだし、
今もこうして、本当は帰りたくない実家に、しぶしぶ帰省していて、
本当は、結構ボロボロで、どこにも居場所などなくて、宙ぶらりんもいいところで、私は、ただ、見栄と意地だけで都会にいるようなもんだよ。
潔く、見切って帰る決断をした君のほうが、よっぽど凄い。
自分が、酷く嘘まみれで真っ黒だった。
"負けてもらった"気がした。
いのうえ君とは、それから一度も会っていない。
あれから、一個一個、嘘を手放し、20年程経った今がある。
やっと、私も居場所を見つけられたのかもしれない。
そう、心の中で、彼へ呟く。




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